女性は生理があるため「血虚(けっきょ・貧血)」になりやすく、それにともなって肌も荒れやすくなります。
血を補うための基本処方が「四物湯(しもつとう)」です。女性疾患に用いられる漢方の8割は、この処方の仲間です。
「四物湯」の主な成分は、地黄(じおう)・当帰(とうき)・芍薬(しゃくやく)・川芎(せんきゅう)で、これらが血を増やし、体を温め、潤し、血行を促進します。
ただし、地黄は胃に負担がかかるため、地黄を除いて白朮(びゃくじゅつ)・茯苓(ぶくりょう)・沢瀉(たくしゃ)を加えた「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」が多く使われます。一般的に婦人薬といわれているものは、ほとんどが「当帰芍薬散」になります。

「四物湯」は、肌荒れ・美容に効果があることで有名ですが、この処方をベースにした皮膚病用の漢方も存在します。それが「当帰飲子(とうきいんし)」です。
「当帰飲子」は、「四物湯」に以下の生薬が配合されています。
- 何首烏(かしゅう):肌の乾燥を潤す。
- 蒺藜子(しつりし)・荊芥(けいがい)・防風(ぼうふう):かゆみを抑える。
- 黄耆(おうぎ)・甘草(かんぞう):皮膚の機能を高める。
「当帰飲子」は、特に乾燥による強いかゆみがある症状に用いられます。皮膚が乾燥によりカサカサしてひび割れる「皮膚瘙痒症(ひふそうようしょう)」にも応用されます。

皮膚が乾燥してカサカサしがちな方や、なんとなく皮膚の色がくすんできたと感じる方、寝床に入るとかゆみや乾燥が悪化する方には、「当帰飲子」をお試しください。
また、「血虚」によって髪のツヤがなくなったり、爪がもろくなったり欠けやすくなったりする場合にも改善が見込まれます。